映画「どうすればよかったか?」は、家族と心の病について深く掘り下げたドキュメンタリー作品です。
登場人物が抱える問題や葛藤、そして家族の力を描き出す本作は、私たちにいくつかの重要なメッセージを伝えてきます。
考察① 家族と向き合うことの難しさ
この映画の中心には、主人公の姉が持つ統合失調症という疾患があります。
家族がその病をどのように受け入れるか、または拒絶するかというテーマが描かれています。
最初、両親は病院に行くことをためらい、たった一度の診断結果で「統合失調症ではない」と判断します。
それが、姉を家庭内に閉じ込める原因となります。
一見、親が過剰に子どもを守ろうとしたように見えますが、その背景には「家族としての恥や偏見」といった心理的な壁があることがわかります。
このような家族内での感情的な葛藤は、どの家庭にもあり得る普遍的な問題であり、外部から簡単に解決できるものではないのです。
この点が映画を観る者に強い印象を与えます。
考察② 治療への疑問とその葛藤
映画の中で描かれるもう一つの大きなテーマは、治療に対する家族の葛藤です。
両親は、姉の症状を理解できないまま、病院に行かせるべきかどうかで悩みます。
姉の治療に関しては、薬の効果が見込めるかどうかという不安もあります。
一度、病院で診断を受けた後、医師から「統合失調症ではない」と言われたことで、両親はその後の行動に対する確信を持ちます。
しかし、実際には姉がその後も苦しんでいる姿が映されます。
このような「診断が合っていたのか」「治療をもっと早く始めていたらどうなったのか」といった疑問が心に残ります。
映画は、家族がどのようにしてその決断を下したのか、そしてその結果どうなったのかを、リアルな視点で描き出しています。
この点で、観客は治療に対する積極的な理解を深めるとともに、簡単には答えが出せない問題が存在することを実感します。
考察③ 時間の流れと家族の変化
映画は、家族が時間とともにどのように変化していくのかを描いています。
特に、両親の年齢や健康状態が変化し、それが家庭内にどのような影響を与えるのかが重要な要素です。
お母さんが認知症を発症する場面は、家族にとってさらに大きな試練となります。
その中でも、姉が薬を服用した後に見せる回復の兆しは、観客に希望を感じさせるものです。
映画の終盤では、姉が薬を服用して劇的に改善した姿が描かれ、これまでの苦しみがようやく報われる瞬間が訪れます。
しかし、その後の急展開には胸を打たれるものがあります。
結局、姉は亡くなり、家族の中で生き残るのは父親一人となります。
家族の絆と時間の流れが、人生の中でどれほど影響を与えるのかを痛感させられます。
まとめ
映画「どうすればよかったか?」は、家族内での複雑な感情や選択の難しさ、そして時間の流れがもたらす変化を深く掘り下げた作品です。
統合失調症という病気の理解を深めるとともに、それに伴う家族の苦しみや葛藤をリアルに描写しています。
特に、治療や病院に対する家族の判断が、どうしても後悔や疑問を呼び起こすことになります。
また、時間の経過とともに家庭内で起こる変化が、物語に大きな影響を与え、最後には観客に深い感動を与えます。
この映画を通して、私たちは「どうすればよかったか?」という問いに対して、自分自身の家族や人生についても考えさせられることになるでしょう。