映画『ラストマイル』は、登場人物たちの行動原理や心の葛藤を描いたサスペンス映画であり、物語を通じて「責任逃れ」のテーマが強く打ち出されています。
今回はこのテーマに焦点を当て、エレナという人物を中心に物語を考察してみます。
彼女の行動が物語全体にどう影響を与えるのか、その背景にはどんな思いがあるのかを探ります。
考察①「責任逃れ」という行動原理
『ラストマイル』の中心にあるテーマは「責任逃れ」です。
エレナは映画を通して、事件に関与する責任を回避し続ける人物です。
爆発事件が起きた後、エレナはその責任をデリーファスト（配送業者）や警察に押し付け、他者に責任を転嫁することに終始します。
特に注目すべきは、山崎という人物に関連するデータの消去です。
エレナは、山崎のデータを消すことで、会社がその責任を負わないようにしようとします。
彼女にとって、個人的な責任を取らないことが最優先であり、会社の利益を守ることが何よりも重要なのです。
この行動は、彼女の冷徹で自己保身に徹した性格を反映しており、映画全体に重く影響を与えます。
考察② エレナの葛藤と成長
映画の後半では、エレナの内面に変化が見られます。
事件が進展する中で、エレナは次第に自分の行動に対して葛藤を覚えるようになります。
特に、山崎の恋人が爆破事件の犠牲となったことを知り、エレナはこれまでの自分の行動に疑問を抱きます。
彼女がこれまで逃げ続けていた責任と向き合わせられる場面は、映画における重要な転換点です。
エレナは自分の過ちを認め、最終的に「責任」を取る決断を下します。
これにより、彼女は自分に課された最後の任務を果たし、物語の終息を迎えることになります。
この変化は、彼女がただの責任逃れの人物から、自己成長を遂げる人物へと進化する過程を描いています。
考察③ 責任から逃げることの代償
「責任逃れ」の行動がもたらす代償も映画の大きなテーマです。
エレナの行動が引き起こした結果は、決して無視できません。
責任を逃れ続けることで、彼女自身が抱える問題が膨らみ、最終的には取り返しのつかない事態に発展します。
エレナが山崎のデータを消し、警察に情報を提供しなかったことが、さらに大きな問題を引き起こし、周囲の人々の命に関わる事態を招いてしまいます。
責任を回避することは短期的には得策に見えますが、長期的にはそのツケが回ってきます。
この映画では、「逃げることが解決策ではない」というメッセージが強調されています。
エレナが最終的に責任を取ることを決断するのは、この代償を受け入れ、自己の弱さを認めるためです。
まとめ
『ラストマイル』は、エレナを中心に展開する責任逃れの物語ですが、その裏には深い人間ドラマが隠れています。
エレナは最初、会社の利益や株価を守るために他人に責任を押し付け、逃げ続けます。
しかし、物語が進行するにつれて、彼女は自分の行動がどれだけ多くの人々に影響を与えたかを理解し、最終的には自己の責任を取る覚悟を決めます。
映画全体を通して描かれる「責任逃れ」がどれほど破滅的な結果を招くかを示す一方で、最後には人間として成長し、責任を取ることの大切さが強調されます。
この物語は、私たちが逃げてばかりではなく、問題に正面から向き合う勇気を持つべきだという普遍的なメッセージを伝えています。
